top of page

 

 

 

人物紹介 

 

▼メフル・マ・メフィート

リヴァイア本編では3章後半から登場する魔法使い。

彼女が魔法学校に通っていた頃のお話

 

▼ハクリュウ・リル・リトゥール

リヴァイア本編では魔法図書館に居る無愛想な子

良く男性と間違わられるのを気にしているらしい

 

 

▼デミコ

魔王様は魔王城で好き勝手にやっている頃のお話

 

--------------------------------------------------

 

【午後の紅茶にスパイスを】【1】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、なんか大っ嫌いよッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あちッ!」 

 

 

「ソレ」を思い出した私は芳醇な香りを放つ琥珀色の液体で舌を焦がした

ついでに持っていたカップを落とした

 

 

落ちたコップは足元に置いていた桃色の液体が入っているガラス瓶と衝突した後

パリンッ!と軽快な音を立てて琥珀色の液体をミックスさせたと思ったら

 

 

足元から爆発音が聞こえて私の足元が爆心地になっていた

 

 

髪もチリチリだ

 

 

 

ドリフかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんの、くそったれがッ!!」

可憐な乙女らしくない言葉を吐いた私はその勢いで机を勢いよく蹴り上げ

小指を机の角に強打した

 

 

 

うめき声をあげ身を屈めた私は研究用の薬棚にぶつかり

その衝撃で色鮮やかな薬品がこれでもか! と言うくらい落ちてきた

 

 

 

ついでに金ダライも落ちてきて、頭を強打した。

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりドリフかもしれない

少し涙目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・今日は運気が落ちているわね」

頭に出来た膨らみを擦りながらヨロヨロと机の下から出てきた私の名前は

 

 

メフル・マ・メフィート

 

 

この辺りでは、知らないものは居ないほど名が通っている天才にして偉大な大魔法使いだ。

近所の子供にその名を聞かせれば

 

「メフル姉ちゃんでしょ!この前、箒から落ちて僕の家の屋根に刺さってたよ!」 と恐れおののく

 

ちなみに屋根の修理代は踏み倒した。

これも私が偉大で恐ろしいから許されるのは承知の事実だろう。

 

 

 

 

 

 

「はぁーあ・・・今日は最悪ね・・・」

雑巾で、気だるげにこぼれた薬品を拭くのは地味に体に堪える

混ざり混ざった薬品からは鼻の中に殺虫剤を吹き付けられたような刺激的な匂いがするし鼻が曲がりそうだ。

 

こう言う時に、風の魔法でサッと片付けれれば便利なことこの上ないのだけど

生憎(あいにく)私の魔法は威力が高すぎてそういう小回りは効かない

 

人それをガサツだと言うが火力至上主義の私には関係ない言葉だ

 

 

なにもかも全部、吹き飛ばしたら綺麗になるじゃない?

いや、実験室、吹き飛ばしたら今までの研究もきれいさっぱりなくなるわけだけど・・・・・・

 

 

 

 

 

 

はぁ・・・とため息を吐いて

視線を移した巨大なガラス管には目じりを吊り上げた不機嫌な顔をした女性が映っている

 

 

 

 

「(こう言う時、ハクリュウの坊やだったら魔法で塵も残さず綺麗にするでしょうね!)」

 

 

 

「うっさいわ!!」

 

内なるもう一人の自分に向かって言葉を放つ魔法使いの言葉は

静まり返っていた冷たい研究室の壁に反響して虚空へ消えた。

 

 

 

 

 

 

「2」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から、数十年ほど前のとある日

 

私ことメフル・マ・メフィートは

 

「魔界高等魔術学校、シルフィード第一級魔法使い養成学校、特級魔術学科」という嫌に長ったらしい

(がちゃんと答えないと教師に怒られる)

 

魔術学校と言う魔法使いを育てる育成機関に所属していた。

 

黒いとんがり帽子に

真っ黒で地味な制服

 

髪は三つ編みならOK

ロングはNG

当然、化粧も駄目

 

年上と話す時はデスマス口調

 

廊下での魔法は禁止

 

全生徒は家からの通学禁止

寮から通わないといけない

勝手な外出は禁止という、ひじょーうに面倒な学校だった

 

 

 

 

 

しかし、それは裏を返せば由緒ある厳格な学校だという事だ。

実際「魔界高等魔術学校、シルフィード第一級魔法使い養成学校、特級魔術学科」

(やっぱり長いな。おいっ!)は

 

初めての女性の魔王であり

極めて強力な魔力を持っていた、二代目魔王「リリア」が創始者だと言われている由緒正しい学校

 

入学試験も実に厳しく毎年1万を超える受験者がふるいに掛けられて

そのうち入れるのは数十人という選ばれたものしか入れない

まさにエリートのための魔術のエキスパートとなるための学校だ。

 

そう考えると校則の厳しさは納得がいくものかもしれない。

 

 

 

 

 

さて、そう言った地味な魔術学校の生徒の中でもひときわ目立つ生徒が居た。

 

腰まで届く赤い髪に

 

自前と思える服には薬品や鎖がぶら下げられているし

 

魔法使いの象徴であるトンガリ帽子はボロボロつぎはぎに補修されている

 

 

 

「おいっ、お前!その格好はなんだ!」

・・・と普通の生徒なら追い出されるはずの彼女と合っても

誰も 何も 言わないのはそれなりの理由が合った

 

 

 

 

 

 

「それは彼女が極めて優秀だから」

 

 

 

 

 

 

1を教えれば10で返すと言う言葉があるが彼女はその通りだった

 

一つの魔法を教えれば魔法が気に入らないのか自分なりに理論を紐解き

再構築し 改造してオリジナルの魔法を作り上げる

 

初級と言われる火の魔法を使わせれば

教師も真っ青な巨大な火の塊を作り出す

 

いわゆる一つの才能。

 

誰もが思った、軽々しく使う言葉ではないかもしれないが

それでも彼女は「天才」なんだろうと……。

 

 

 

既に魔術学校の教師を超えるほどの魔法力を兼ね備えている

そんな、彼女に向けられるのは 尊敬 と 畏怖。

 

どんな服装をしていようが咎められないわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はぁーあ。暇ね」

古びれた教室の中、赤色の髪をした彼女が呟いた。

 

「ひ、暇ですか! じゃ、じゃあ!ティータイムにしますか!

私マドレーヌ焼いてきましたから!ぜひ!」

それを見て嬉しそうに身を乗り出した栗色の髪をした少女は赤色の彼女に語りかけた。

 

「いらないわ、あんたのマドレーヌは美味しくないし砂糖入れ過ぎよ

それにあんたは背も小さいし、胸も小さい」

「あぅう・・・」

ズバッと矢継ぎ早に好意を否定されたばかりか

自分のコンプレックスを指摘されたクラスメイトは涙ぐんだ

 

その様子を見てため息をこぼす彼女は栗色の髪をした生徒を横目で見つつ言葉を繋げる

 

 

「いやさぁ、なんかねぇ…… 刺激が足りないと思うのよ。この頃」

「むぐ・・・、刺激ですか?」

自分のマドレーヌを食べていた少女は必死に口いっぱいに頬ぼっていた甘味を飲み込んで答えた

 

「私って天才じゃない? 大体の魔法ならもう使えるわけよ、分かる?」

「凄いですよね……、あっ、私は凡人なので分かりませんけど」

「天才って言うのはね常人が気が付かないことを気付けるから天才なのよ」

分かる?と首をかしげる赤い髪の彼女に

はぁ?と首を傾けて答える栗色の少女

 

 

「つまりは、普通の魔術書を読んでも私なら1000ページの本が1万ページになるわ

だって、一つの完結した理論でも紐解けばそれは数千通りに形を変えるから

一ページでは表せない文章量になるのよ?

天才ってのは絶えず色々な思考をめぐらせることができるから天才なのよ」

大げさな身振りで話す彼女に少女は目を輝かせて ふんふん。と聞くばかりだ

 

「・・・というわけで天才には世の中はまだまだ 刺激であふれているはずなのよ」

と締めくくってから赤い髪の彼女は はぁ・・・とため息を吐いた

 

 

 

「・・・でも?」

「でも?」

赤い髪の彼女の言葉に栗色の少女は言葉を繰り返した

 

「・・・暇なのよ」

「暇なんじゃないですかっ!!」

ズコーと古典的なこけかたをする少女を見て赤い髪の彼女はまたため息をついた。

 

 

「なんかさぁ、……耳寄りな情報とかないの? ないなら私の魔法薬の実験台になりなさいよ」

「なりません! この前もらった魔法薬を飲んだらヒゲが生えて

クラス中から笑われたのは今でも覚えてますから!!」

「もっと、ふさふさになる薬もあるわよ?」

「量の問題じゃないですから!

てか、なんで私が薄毛に悩まされている感じになってるのですか!?」

赤色の彼女の一言に栗色の彼女は椅子をガタンと言わせて立ち上がった

それを見て、気だるそうにいいから座れと赤髪の彼女はひらひらと手を振った。

 

 

 

「あっ、でも耳寄りな情報ならありますよ」

椅子に座った少女は言った

 

「この「複合属性、5大魔術 研究学科」に転入生が入ってくるそうですよ!」

「転入生?」

赤髪の彼女は怪訝そうに聞き返した

 

「この「複合属性の学科」に転入生とは聞いたことないわね・・・

複合属性を扱えるのは珍しいのに……」

上級生が複合属性を覚えてクラスに転入なら分かるけど…と赤髪の彼女は思った。

 

「複合属性」とは二つの属性を組み合わせた魔法のことだ。

基本の魔法を極めた者の中からごく稀に複合魔法を扱えるものが現れる

二つの属性を上手く合わせ複合属性にすることは非常に繊細な技術が必要で

誰もが扱えると言うわけではなく複合属性を扱えるものは非常に少なかった

 

「複合属性、5大魔術 研究学科」に赤髪の彼女と栗色の少女の二人しか居ないのも

複合属性が以下に難しいかを物語っていた。

 

 

 

「えへへ…確かに複合属性は難しいですからね・・・」

「なに、喜んでんの?」

「いやぁ・・・。 私も複合扱える内の一人ですから…」

「あんたの魔法は威力が弱すぎて話にならないけどね」

「ぎゃふん!」

机に突っ伏しておよよ…と泣く栗色の少女に

今どき「ぎゃふん」って素で言うやつ初めて見たわ…と呟く赤色の彼女。

 

 

 

 

 

そんな穏やかな空気の中突如

「バタンッ!」と大きな音が響き教室の扉が乱暴に開かれた。

 

 

「はいはい、授業を始めるよ。ちびっ子ども!」

大きな声を響かせ入ってきたのは長身の女性だ。

 

白衣を着こみ

黒い髪は後ろに括りポニーテールにしている

それだけのことを見れば一件普通のガラが悪い教師に見えるが

 

羽織っている白衣は血にまみれ、薬品が沁み込んでいる跡が見え

咥えている煙草と思われる物からはモクモクと紫色の煙が出ていることが

この人物を近づきがたい空気にしていた。

 

 

柄の悪い教師はドカッと教室の前にある教壇に座った後。

手をビシッと軍隊のする仕草をした後、話しかけた

「おすおす、元気にしてるか生徒諸君!」

「センコーこそ、どうしたのよ また、実験失敗したの?」

と赤髪の彼女は気だるそうに返した。

 

「失礼な!私がいつも失敗してると思うとは! 君は本当に失礼な奴だな」

 

ふっ、と前髪を掻き上げ教師は続ける

「まぁ、失敗したのだが」

 

やっぱり、失敗したんじゃないですかー!

と突っ込みを入れる栗色の少女に

 

あー、はいはい。と興味のなさそうな赤髪の彼女

その様子を見るからに血まみれの白衣はいつものことのようだ。

 

 

 

「んな、いつもの無駄話は良いのだよ

今日は時間が押しているのだから急ぐよ!」

 

 

「ほら、転校生入ってきな!」

 

教師にうながされ

ゆっくりと歩いてきた転入生の姿を初めて見たときに赤髪の彼女が思ったのは

「おとなしそうなやつ」の一言だった

 

 

 

銀色の髪はショートカットにしている背は小さめで、大事そうに魔術書だろうか?

大きな本を抱えている

 

女性としての特徴があまり出ていないことと

青色の鋭い眼光からふと見ると美男子に見えるような雰囲気だ

 

 

 

 

「おぅ、転入生。

私がこのクラスを担当しているパトリシア・ニャンプ・ラーニだ

赤い髪のヤンキーはメフル

栗色のチビはグリル よろしくな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀色の少女はパトリシアの声に軽くうなずくと

静かに呟いた

 

 

「魔界都市から来ましたハクリュウ・リル・リトゥールです

 以後、よろしくお願いします」

 

 

 

その2に続くかも

 

 

 

 

 

 

 

bottom of page